「たけべアメージングストーリー」 作 建部 鮎太「僕らはここから世界を変えるんだ」建部の３人の子どもたちが時空を超えた旅に出た。
第４話 第二章「試合」
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＊これまでのあらすじ＊
建部中学1年生の建部鮎太、妹さくら、同級生の河本温人はふとしたことから江戸時代初期にタイムスリップする。
そこで出会った僧侶、日船や石仏泥棒の富蔵の力を借りながら、彼らはしだいに自分たちの力で生きていくことに目覚めていく。
日船上人の計らいで、鶴田藩角石谷村の武術の達人の老翁にかくまわれることになった三人と富蔵。互いに協力しながら日々を過ごしていく。
そんな中、薬を買いにさくら、温人、富蔵の三人は中田新町に向かう。老翁の用事で鶴田で分れた鮎太 は旭川ダムに沈んだ湖「姫こ渕」に行き、そこで雨に降られた女の子にレインコートを差し出す。
不思議な出会いの後、鮎太には中田新町でさくらが建部領主の子らに連れていかれるという事件が待っていた。 しかし事の一部始終を知った領主、池田長泰はさくらを放ち、家来を遣わし、角石谷の老翁に鮎太たちとその武士の子らと を新年の武術披露会で試合させること、そして嫡男、長尚にそのための修練を依頼したいとの申し出をする。 新たな生活がはじまる中、いつしか子どもたちに友情が生まれる。そして新年の試合。鮎太はさくらを連れ去った子との決勝を制す。＊主な登場人物＊
建部 鮎太（あゆた）
建部中学1年生の少年
建部さくら
鮎太の妹、小学5年生
河本温人
鮎太の同級生
腰折れ富蔵
富沢地蔵の盗人で優しい男
鶴田 楓
鶴田城の姫君
竹内老翁
竹内流武術の開眼者
池田 長尚
建部領主、池田長泰の嫡男
塩屋十兵衛
中田新町の塩問屋の息子
「建部鮎太と言ったな、せがれ、長尚が世話になったそうじゃ、礼を申すぞ。今日の試合も見事じゃった、で、何かほうびを取らすが望みがあれば言うてみい」
はい・・・、突然のことに答えが浮かばなかった。
小田十郎左衛門さんがそばに来て、耳元で「殿がそう言われている、この際じゃ、何なりと申した方がいいぞ」と教えてくれた。
そこで僕は以前から、さくらと温人とで願っていたことをお頼みすることにした。
「富沢村に腰にひびの入った地蔵様が置かれています。その守り人として身内の富蔵さんが住むことをお許し願いたいのですが」
「ハハハ、そんなことか、欲のない奴じゃのう。よしわかった、十郎左衛門すぐに手配してやれ。ハハハ、ハハハ、愉快じゃ、今日は愉快じゃのう」
控えていたお侍たちもそれに合わせ「ワハッハ」と声を出して笑った。
温人は、痛めた右肩をさすりながら、「悔しいなあ、もう少しだったのになあ」と先ほどの試合の話をさくらと富蔵さん、それと送りに来てくれた十兵衛さんに繰り返し言っている。
さくらが「でも温人さんの最初の一本は超カッコいいよ」と言ったので、やっと気を取り直して、
「へへ、そうかなあ」と顔をほころばせた。
舟着場の手前の空き地にさしかかった時、バサバサっと回りの葦が踏みつけられる音がした。僕と温人は荷を投げ、竹刀を構えた。
四、五人の侍の子たちが木刀を手に取り囲んでいた。
リーダーの平兵衛がジワーと寄ってきて「勝負はこれからだ！」と言った。と同時にてんでに振りかざして襲ってきた。
僕の竹刀は自然とそれを受け止めては跳ね返した。どこから相手が襲ってくるのか考える間もなく身体が動いた。
それは気づかないうちに、いつの間にか身についていた教わった形の連続だった。
竹刀がこれ以上の受けができないほど折れたと分かったとき、
「やめろ、やめえー」と声がして、一人の子が輪の中に駆け込んで来た。
長尚さんだった。
「これ以上やるなら、わしが相手じゃ」
この状況に一人二人と木刀を下げ、しまいには平兵衛を残し全員が後ろへ身を引いた。平兵衛は尚も木刀を強く握ったままだったが、やがてしぶしぶとおろした。
長尚さんに舟まで見送ってもらい僕らは無事、帰途についた。互いの胸の中に、わずか数十日の間に見違えるほどたくましく成長した長尚さんの姿が刻まれた。そして、この時は思いもしなかったけど、これが長尚さん、後の池田宗春公との最後の別れとなった。
まだまだ続く次号、乞うご期待！
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＊この物語に登場する人物や出来事は、あくまで想像上のもので実際の人物、史実とは異なります。